2024年10月15日
パニック障害は有名人が公表するなど一般的に知られた病気ですが、当院でも多くの方が悩んで受診されます。 悩んでいる方はかなり恐怖感が強い病気ですので、臨床ではどのように治療しているかなどお伝えいたします。 この動画をみると、パニック障害がなぜおこり、どのような治療をしていくかが分かりますので、是非最後まで観てください。
病気について
まず初めに、パニック障害とパニック発作は少し違う用語です。パニック障害というのはパニック発作が進行して、最終的に障害と診断がつくようなイメージです。
パニック発作は、突然生じる動悸や発汗、呼吸困難感などの自律神経症状と強い恐怖感を伴う不安発作のことを指しますが、発作と同じような状況、たとえば車の中や、電車にのるとか、そういいうことを避ける回避行動が出現し、行動の範囲がせまくなってしまうことでパニック障害と診断します。 症状はいつ起こるかははっきりわからず、“予期しないパニック発作”というのが診断の条件です。また、また発作が起きるのではないかと不安に感じる予期不安というのもみられます。
具体的な症状
パニック発作は動悸、発汗、手の震えや、胸が苦しくなったり、めまいや吐き気などを伴います。このままでは死んでしまうのではないか、と思うような急激に起こり短時間で消失するものをいいます。自分の中での症状はとても激しいのですが、はたからみたら分からないことも多いので、なかなかその苦しさは理解されづらいものになります。 また実は見逃しがちなことは、体が原因でも同じようなパニック発作がおこるので、それを調べなくてはいけません。 心臓由来による循環器の問題や、甲状腺機能亢進症、カフェインの乱用などが有名です。甲状腺などのホルモンは精神科でも採血をして調べています。
治療
治療は薬物療法と心理療法になります。 まずは薬物療法によって症状を緩和し、心理療法によって再発しないようにしていくことが理想的です。 具体的には、まずSSRIという抗うつ薬の投与にてパニック発作の消失、予期不安の軽減を試みますが、抗うつ薬は聞くまでに1か月ほどかかるんですね。ですので、パニック発作が頻発したり、不安が強い場合には、ベンゾジアゼピン系抗不安薬をつかいます。 抗うつ薬としては、セルトラリン錠25mg、パロキセチンという薬を使用されることが多いです。また、抗不安薬としてはアルプラゾラムを使用することが多いかと思います。
症状が改善したら、認知行動療法などの心理療法が有用です。 認知療法とは恐怖感で視野狭窄してしまった捉え方を、おちついて引いて考え、捉えなおすような治療です。 基本的には、パニック障害のメカニズムや、治療法について十分理解してもらい、以前のようにパニックに陥らず、おちついてコントロールできるようにします。 具体的には「息苦しくなってきた」という症状を自覚したとき、そういえば昨日は残業で大変だったな、とか、睡眠時間がすくなかったからかな、とか、その原因を一歩引いて捉えるような努力の方法です。一歩引いて俯瞰で捉えると、恐怖感に支配されづらくなります。 次に、行動療法があります。 ざっくりいうと、恐怖の場面に少しづつ慣れることです。 電車にのるのが不安であれば、その前に駅まで行く、次に駅ホームまでいく、誰かと一緒に乗る、など、体験としてならしていく治療です。 精神的にも身体的にもやや侵襲的ですので、まずは薬物療法で不安を軽減しないと実践は難しいと思います。
予後
これらの治療を行うと、すくなくとも治療前よりは改善することがおおいですが、その1/3が寛解に達するものの、20%は慢性的に6~8年間症状が続くといわれています。 再発や反復が多い病気で、すぐに薬物療法をやめるということはおすすめはできません。 外来の場面では1年ほど薬物療法を続け、相談の上、仕事のストレスが少ない時期などに減薬し、問題なければそのまま終了する流れが多いです。 薬を飲むことがストレスに感じる方も一定数いますので、いつまで薬物療法を継続するかというのは、医師としての意見を伝えた上で、実際は患者さんと相談して決めることがおおいです。
これらの内容は当院のYoutubeをまとめたものになります。
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【院長 副島正紀】 精神科専門医 精神科指導医 精神保健指定医 認知症診療医 –X