「仕事が遅い」は性格じゃない|大人の発達障害とうつ状態の関係|シモキタよあけ心療内科|下北沢のメンタルクリニック・心療内科・精神科

〒155-0031東京都世田谷区北沢2-12-14Medicus KITAZAWA 6階A

03-6450-8682

初診用問診 初診予約 再診/カウンセリング
チャットバナー
メインビジュアル

「仕事が遅い」は性格じゃない|大人の発達障害とうつ状態の関係

「仕事が遅い」は性格じゃない|大人の発達障害とうつ状態の関係|シモキタよあけ心療内科|下北沢のメンタルクリニック・心療内科・精神科

2026年1月10日

「仕事が遅い」は性格じゃない|大人の発達障害とうつ状態の関係

「仕事が遅い」と言われ続けたあなたへ

「また残業?」

上司からのその一言が、胸に突き刺さる。周りは定時で帰っているのに、自分だけがいつも仕事を終わらせられない。努力が足りないのか、能力が低いのか・・・そう自分を責め続けていませんか?

実は、「仕事が遅い」という悩みの背景には、性格や努力不足ではなく、発達障害の特性が隠れているケースが少なくありません。特に大人になってから発達障害と診断される方の中には、長年「仕事が遅い」という悩みを抱え、その結果としてうつ状態に陥ってしまう方が多く見られます。

この記事では、精神科専門医の視点から、仕事の遅さと発達障害、そしてうつ状態の関係について詳しく解説します。「もしかして自分も?」と感じている方は、ぜひ最後までお読みください。

大人の発達障害とは?~見過ごされてきた「生きづらさ」

発達障害は決して「子どもの病気」ではありません。

発達障害の主なものは、自閉症スペクトラム障害(ASD)注意欠如・多動性障害(ADHD)学習障害(LD)の3つです。これらは先天的な個性や特性であり、本人に悪気があるわけでも、親の育て方に問題があるわけでもありません。

多くの場合、子どもの頃に発達障害であることが分かりますが、障害の程度が軽かったり、問題行動が目立たなかったりして、大人になってから発達障害と診断されることがあります。こうした「大人の発達障害」は大人になって発症したのではなく、基本的に幼少期から症状が続いていると考えられます。

自閉症スペクトラム障害(ASD)の特性

ASDの方は、表情や言葉から相手の気持ちを読み取れなかったり、興味の範囲が狭く特定のものにこだわったり、単調な行動を繰り返したり、音や光に敏感だったりする傾向が強いとされています。職場では「空気が読めない」と言われたり、暗黙の了解が理解できず、明確な指示がないと動けないといった困難を抱えることがあります。

注意欠如・多動性障害(ADHD)の特性

ADHDの方は「忘れ物が多く、片付けが苦手」「じっと座っていられない」「がまんすることが苦手で衝動買いをしたりする」などの行動に特徴がみられます。仕事の場面では、ケアレスミスが多い、優先順位をつけるのが苦手、集中力が途切れやすいといった困難が生じます。

実際に、発達障害の診断を受けた方からは「今回受診するに至った不安とは関係ないと思った」や、「上司から注意されてうつになったけど、ケアレスミスが多いのは自分の性格だと思っていた」などと語られることもあります。

なぜ「仕事が遅い」のか?~発達障害特性と作業速度の関係

「仕事が遅い」という悩みは、単なる努力不足ではありません。

発達障害の特性がある方が「仕事が遅い」と指摘される背景には、いくつかの明確な理由があります。心理検査(WAIS)の結果から、その原因を分析することができます。

処理速度の低さ

WAISという知能検査では、「処理速度」という指標が測定されます。この処理速度が低い場合、作業そのものに時間がかかってしまいます。一生懸命に処理をしようとしても、どうしても周囲よりも遅くなってしまうのです。これは本人の努力不足ではなく、脳の情報処理の特性によるものです。

知覚統合の弱さ

知覚統合が弱いと、作業の理解・把握が遅くなります。介護の作業の流れの中で次に何をするかとか、暗黙の了解を理解しながら先回りして動くのが苦手になります。その結果、動き始めが遅くなったり、理解に時間がかかったりするのです。

いつも同じミスを繰り返してしまう理由

「こうすればもっと楽にできるよ」「こうしてみたらいいと思うよ」といったアドバイスをもらっても、自分のやり方にこだわりがあり、提案を受け入れられないといった思考の偏りが原因として考えられます。これは「ハイコントラスト知覚」と呼ばれる特性の一つで、物事を白か黒かで判断しやすく、柔軟な対応が難しくなります。

優先順位をつけるのが苦手

「シングルレイヤー/シングルタスク思考」という特性があると、一つの作業を完璧に終わらせないと次に進めません。仕事Aに取り組んでいる途中で仕事Bを依頼されても、仕事Aが片付かない限り、仕事Bに集中して取り組めない、あるいは強い抵抗感を感じます。

重要なのは、作業に取り掛かるのが遅いことに課題がありそうな点です。処理速度だけに目が行くと対策が取れなさそうですが、知覚統合の弱さも組み合わされているところがポイントになります。周囲の配慮や環境調整で支援しやすい部分があるのです。

発達障害からうつ状態へ~二次障害のメカニズム

発達障害の特性そのものよりも、深刻なのは「二次障害」です。

発達障害の方は、子どもの頃から叱られたり、責められたり、周囲からの理解を得られずに受け入れてもらえない場合が多く、孤立してしまいがちです。そのような経験を重ねていくと、自分に対して否定的な評価しかできなくなり、うつうつとした気分に陥ったり、不安が強くなったりします。

発達障害の特性によって、相手の表情を読み取れなかったり、忘れ物が多かったりすることで、対人関係や仕事でたびたび失敗してしまい、うまくいかないことで、うつの症状が悪化していく・・・こうした悪循環によって生じるのが「発達障害の二次障害としてのうつ病」です。

「新型うつ病」と発達障害の関係

最近増加している「新型うつ病」は、仕事の場面では抑うつ気分、不安、焦燥、意欲低下などうつ病の症状が目立ちますが、仕事以外の場面では比較的症状が目立たないというものです。この場合、抗うつ薬の効果はあまり期待できません。

「新型うつ病」は、実は発達障害の二次障害と考えられるケースが多いのです。発達障害、中でも自閉症スペクトラムの特性であるコミュニケーションの障害や社会性の障害、感覚過敏などにより仕事に適応できず(つまり本質は適応障害)、二次的にうつ状態に陥っていると考えられます。

併存疾患の高さ

ある研究報告によると、自閉症スペクトラム障害の人の20~40%、注意欠如・多動性障害の人の20~50%がうつ病を併発しているといいます。発達障害の影響で二次的にうつ病を発症することは決して珍しくないのです。

成人期ASDにおいて気分障害が53%、不安障害が50%、強迫性障害が24%、物質使用障害が16%、精神病性障害が12%に併存していたとする報告もあります。一方、成人期ADHDも併存疾患が多く、不安障害が47.1%、気分障害が38.3%、衝動制御障害が19.6%、物質使用障害が15.2%という報告があります。

職場での具体的な困難~当事者の声から

実際に発達障害の特性を持つ方が職場で経験する困難は、想像以上に深刻です。

「せっかく大卒を採用したのに高卒より使えない」「伝票1枚入力するのに30分もかけないでよ!」「今日が初日の新人より(作業が)遅いって、どういうこと?」「別の仕事を探してくれないかな・・・」

これらは、実際に発達障害の特性を持つ方が上司や同僚から直接言われたり、偶然耳にしてしまったりした言葉です。自分でも仕事が遅いという自覚はあったものの、自己肯定感は奪われる一方だったといいます。

作業の遅さが何よりも辛い

他の人は定時で仕事が終わるのに、自分だけは人の何倍も時間がかかる気がします。作業を習熟するうちに少しはまともになりましたが、それでも残業しないと仕事が終わらない日々が続きます。疲れを感じづらい体質なのか、頑張るだけ頑張った後に、倒れてシフトに穴を開けてしまうことも何回も出てきたという方もいます。

強迫行為による作業の遅れ

過去に強迫神経症と診断された方の場合、さまざまな強迫行為を繰り返すことも作業の遅れに拍車をかけます。社内の郵便物を集配する仕事に就いていたときは、回収漏れはないと納得できるまで、空のトレーの前で2分以上確認を続けてしまう。トイレに行ったり、ウェットティッシュで手を拭いたりする回数が多すぎると注意を受けたこともあります。実際にティッシュは1日約150枚は使っていたといいます。

空気が読めない失敗

仕事が遅れているのに、昼休みにソファーで新聞を読んでいて「よくそんな暇あるね」と皮肉を言われたことや、講演会の準備一式を任されたのに、肝心の講師への案内状を送り忘れたこともあるといった、明確な指示がないと動けないといった発達障害の特性による失敗もあります。

治療とサポート~適切な対応で改善は可能

では、どうすればいいのでしょうか?

発達障害が背景にあるうつ病患者に対する治療と、一般的なうつ病患者に対する治療に基本的に変わりはありません。ただ、発達障害特有のこだわりの強さを持った人などに対して個別の対応が必要な場合があります。

薬物療法は最小限に

「新型うつ病」の場合、薬物療法は最小限にとどめ(SSRI、SNRI、NaSSAをごく少量、あるいは漢方薬)、認知行動療法的アプローチを行う方が効果が上がります。発達障害基盤の精神科併存症に対して、一般の成人量の処方を行うと、副作用のみ著しく出現し薬理効果は認められない、ということが少なくないからです。これはおそらく、多くの方が過敏性を抱えるからだと考えられています。

具体的な指示の重要性

「ゆっくり休養してください」と声を掛けたときに、「何をしたらいいのか分からない」と戸惑ったり、「一日のスケジュールが決められていないと落ち着かない」と不安を感じたりする場合があります。そういうときは「1時間はベッドに横になって休んで、次の1時間は軽く運動しましょう」などと具体的に指示することがあります。

生活リズムと職場環境の調整

発達障害に対しては、薬物療法のほかに、心理教育(病気について理解してもらう教育)、認知行動療法(思考や行動のパターンを修正する療法)などが有効です。また、生活のリズムを整え、職場の環境を変えることで対処することも重要です。

気を付けなければならないこと

うつの症状が治療である程度改善しても、発達障害による問題を放置したままだと、うつの病状の悪化や長期化、再発につながりかねません。うつ病の治療をまず優先し、そののちに発達障害の問題に適切に対処する必要があります。

自分でできる対処法~特性を理解して工夫する

診断を受けるだけでなく、日常生活で実践できる対処法があります。

ミスが起きている状況を可視化する

ミスが起きている状況を詳細に書き出し、可視化してみましょう。その中から、ご自身のこだわりから取っている行動や「こうした方がいいに決まってる」「こうするのが普通だろう」と思っている行動や言動を見付けます。そして、周囲の人が同じような場面でどう対応しているのかを観察したり、忙しくないタイミングを見計らって質問したりしてみましょう。

こうして行動の選択肢を増やし、「どちらの選択肢が仕事の達成のために効果的か」という尺度で、行動を選択していくことが大切です。

ふせんでのタスク管理

優先順位をつけて作業することが苦手な方には、ふせんでのタスク管理をおすすめします。まずは、ふせん1枚につき1つのタスクを書き出し、すべてのタスクを視える化します。そのうえで、上司や同僚にそれ以外のタスクがなかったか確認をします。

次に、以下の基準でふせんを並べ替えていきます。①提出期限が近いタスク、②期限は近くないが時間がある時に少しずつ進めておくタスク、③日課となっているタスク(下書きなどは移動時間などのすきま時間で済ませておくとGOOD!)。並べ替えたら、「今の時間でできるタスクはどれか」と考える時間を設定しましょう。

忙しくても、付箋を見つめて考える時間を確保することで、気持ちの切り替えがスムーズになるはずです。

専門医療機関での診断と支援

「もしかして自分も?」と感じたら、専門医療機関への相談が第一歩です。

発達障害の診断には、詳細な問診とともに、WAIS(ウェクスラー成人知能検査)などの心理検査が用いられます。この検査により、言語理解、知覚統合、作業記憶、処理速度といった認知機能の得意・不得意が明らかになり、具体的な支援策を立てることができます。

診断書や復職支援

病状に応じ、お勤めの会社に提出する診断書・傷病手当等の書類作成が可能です。休職中は復職に向けた療養アドバイスを行います。復職に向けた具体的なプランを一緒に考えていくことが重要です。

カウンセリングと心理検査

公認心理士、臨床心理士の資格を持った専門スタッフがカウンセリングを行い、薬物療法だけに頼らない治療を行います。また、発達障害スクリーニング検査により、自閉症(ASD)、アスペルガー障害、ADHDの診断も可能です。

専門医による質の高い医療

精神科専門医による質の高い医療で、皆さまの心のやすらぎをご提供することが大切です。発達障害とうつ状態の両方を理解した専門医による診療を受けることで、適切な治療とサポートを受けることができます。

まとめ~「仕事が遅い」は性格ではなく、特性です

「仕事が遅い」という悩みは、あなたの性格や努力不足ではありません。

発達障害の特性による処理速度の低さ、知覚統合の弱さ、優先順位付けの困難さなど、脳の情報処理の特性によるものです。そして、その特性によって繰り返される失敗体験が、うつ状態という二次障害を引き起こしてしまうのです。

重要なのは、適切な診断と支援を受けることで、改善は十分に可能だということです。

自分の特性を理解し、環境を調整し、具体的な対処法を身につけることで、仕事のパフォーマンスは向上します。また、うつ状態の治療と並行して発達障害の問題に対処することで、再発を防ぐことができます。

「もしかして自分も?」と感じたら、一人で抱え込まず、専門医療機関に相談してください。あなたの「生きづらさ」には、必ず理由があり、そして解決への道があります。

シモキタよあけ心療内科では、精神科専門医による質の高い医療と、経験豊富な心理士によるカウンセリング、発達障害スクリーニング検査を提供しています。下北沢駅から徒歩1分という好アクセスで、完全予約制のため、プライバシーにも配慮した環境で診療を受けることができます。

詳しくは、シモキタよあけ心療内科の公式サイトをご覧ください。あなたの心のやすらぎのために、私たちがサポートいたします。

著者プロフィール 

シモキタよあけ心療内科 院長 副島正紀」

〜こころに、よあけを〜

【資格・所属学会】

認知症診療医

日本精神神経学会 精神科専門医

日本精神神経学会 精神科指導医

精神保健指定医

TOP