発達障害
発達障害
発達障害は主に幼少時から「変わった子」と言われたり、周囲の子供と比べて独特なこだわりや振る舞いをしている方が多いです。症状の重さは人それぞれであり、単に個性的な方で問題なく暮らしている方もいますし、周囲と上手くいかず悩んでしまう方もいます。
精神科のクリニックでは、何らかの社会生活での失敗を通じ、「もしかして自分は発達障害じゃないか」と心配され受診される方が多いです。
以下に、発達障害の主な病気、診断、治療、似たような疾患について説明します。
コミュニケーションが苦手で、興味の範囲が狭く、こだわりが強い、という傾向にあります。
乳幼児検診で言葉の遅れがみられるなど、幼少時から指摘されることがあります。周囲がみんなで遊ぶ中、一人で何かに没頭していたり、「〇〇博士」とよばれるほど、特定の分野についてとても詳しく自分で調べる人もいます。
大人になると、会話のノリについていけず、「どうしてみんなは盛り上がってるんだろう」と悩んだり、周りに距離を置かれてしまうことがあります。このように大人になってから悩みが明らかになることで、「大人の発達障害」という言葉が知られるようにもなりました。また、中でも知的障害や、言葉の遅れがない方をアスペルガー症候群と呼びます。
注意が散漫で、人と会話していても別のことを考えてしまったり、忘れ物が多く、遅刻癖が多かったりします。また多動性・衝動性があり、小学校のころ授業をじっと聞いているのが苦手だったり、人の話に割って入ってしまうクセがあったりします。「過集中」といって好きなものに長時間何かに没頭することができますが、提出期限のあるやりたくない作業などは間に合わなかったりムラがあります。
読み書きや計算など特定の学習領域が苦手な方です。知的に問題ない方だと、周囲に気づかれにくいような傾向があります。
基本的には問診で診断ができます。幼少時~学生時代のエピソードや、最近の様子などを伺います。何が得意で、何が苦手で、周囲とどのようなギャップに悩んでいるかなど、発達障害特有のトラブルがあるか確認します。
精査を希望される場合には、IQテストを含めた心理検査などを行います。公的な診断書が必要であったり、数値として正確に診断してほしい方などにはおすすめです。(発達障害スクリーニング検査(後述))
以下は病気ごとの当院で行える心理検査です。
①ウェクスラー式知能検査(WAIS-Ⅳ)IQに加え、「言語理解」「知覚推理」「ワーキングメモリー」「処理速度」という4つの指標で得意・不得意を評価します。社会人であれば、今後の転職や現在の業務内容の調整など、参考にすることができます。
②AQ自己評価の簡易テストです。「社会的スキル」 「注意の切り替え」 「細部への関心」 「コミュニケーション」 「想像力」などの項目があり、点数化して傾向を調べることができます。
成人期ADHD検査(A-ADHD):自己評価の簡単な検査です。三大症状(注意散漫、多動性、衝動性)を中心に、点数による評価ができます。
「自分の得意・不得意を知りたい」「面接だけではなく点数で自分の能力を測りたい」「仕事をする上での能力を調べたい」などさまざまな希望があり、当院でも発達障害にフォーカスしたスクリーニング検査を導入しました。基本的なIQを知ることができ、自閉症スペクトラム障害、アスペルガー障害、ADHD、学習障害の傾向など総合的な評価が可能です。
①ウェクスラー式知能検査(WAIS-Ⅳ)
IQに加え、「言語理解」「知覚推理」「ワーキングメモリ」「処理速度」という4つの指標から得意・不得意を評価します。世界でもっとも使用されている知能検査で、発達障害特有の特性を評価するために用いられます。
②AQ-J
自己評価の簡易テストです。「社会的スキル」「細部への関心」「コミュニケーション」「想像力」などの項目があり、点数化して傾向を調べることができます。
③ADHDの自己記入式症状チェックリスト (ASRS)
自己評価の簡単な検査です。三大症状(注意散漫・多動性・衝動性)を中心に、点数による評価ができます。
検査時間は2~3時間、3週間後に検査レポートをお渡しし、心理士よりフィードバックをお伝えします。
結果は医師と共有され、診断・治療の参考となります。
発達障害スクリーニング検査は25000円(税込)、自費診療となります。
苦手な状況などを確認し、今後どのように対処するか助言します。心理士とのカウンセリングでは、認知行動療法(考え方の悪い癖を直す)やロールプレイ(やりとりの練習など)を行うことがあります。
ADHDでは注意・衝動性を改善するアトモキセチン(ストラテラ)、グアンファシン(インチュニブ)などを使用します。(後述)他の自閉スペクトラム症などの発達障害は、2次障害(抑うつ気分、不眠、イライラなど)に対し、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬、抗精神病薬などの対症療法を行います。
気分の落ち込みなどが強く、仕事や学校に行くことが困難と思われる場合、診断書を発行し自宅療養を勧めることもあります。
ノルアドレナリンという神経伝達物質を増やすことで、不注意・多動性・衝動性のすべてを改善する薬です。効果がでるまで2~3週間と少し時間がかかり、人により吐き気が出ることがあります。
アドレナリン受容体に作用し、多動性・衝動性を改善します。不注意への効果は強くありません。眠気や血圧低下がみられることがあり、不整脈の方に使えないなどの縛りはありますが、前述のストラテラで効果がなかった方へのいい治療薬となります。
※ほかにもコンサータやビバンセという薬がありますが、当院では処方ができません。
発達障害と似た症状を示す疾患も存在します。これらは鑑別診断が必要です。
知的能力の全般的な低下を伴う障害です。学生時代は全体的に成績が下の方だったり、中学や高校など、大人になるにつれ授業についていけなくなったりすることがあります。上に述べたWAIS-Ⅳなどの心理検査にて評価します。
考え方、行動が偏っていることで、社会に不適応をきたしている病気です。コミュニケーションの苦手さは発達障害と同様ですが、能力として出来ない訳ではありません。
発達障害は近年とてもご相談が多い病気です。他の精神疾患と比べ、「診断だけしてほしい」という希望も多い印象です。初診の30分で発達障害の可能性があれば、十分に診断は可能と思います。人と違うことは「個性」であり、困っていなければ本来治療は必要ありません。ですが、精神科を受診されるということは人間関係や生活など改善したいところがあるはずですので、まずは一度ご相談ください。
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