不眠症の主な症状

不眠症には主に以下のような症状があります。

1.入眠困難

寝つきが悪く、布団に入ってから30分以上かかり苦痛に感じる。

2.中途覚醒

夜中に何度も目が覚め、その後再び眠りにつくのが難しい。

3.早朝覚醒

早朝に目が覚めてしまい、寝足りなさを感じる。

4.日中の影響

日中の眠気、集中力の低下、イライラ、気分の落ち込み、仕事や学業のパフォーマンス低下などが見られる。

不眠症の治療

不眠症の治療は、多角的にアプローチすることが重要です。以下に主な治療方法を紹介します。

1.薬物療法

• 睡眠薬を使用します。寝つきを改善する薬、睡眠を維持する薬、睡眠のサイクルを正常化する薬、など患者様のお悩みに応じた処方を行います。
• 不眠の原因が他の精神的な問題にあると診断されれば、抗うつ薬、抗精神病薬、抗不安薬などを併用することがあります。

2.生活習慣の指導

• 就寝、起床時間を共有し、正しい睡眠習慣のアドバイスする。
• 就寝前に照明を落とし、スマホなどの刺激を避ける指導を行う。
• カフェインやアルコールの摂取を控える。
• 日中に十分に日光を浴びることで、睡眠に必要なメラトニン産生を促す。

薬物療法の具体例

不眠症の治療には、状況に応じて薬物療法が行われることがあります。
副作用が少なく、依存性が低いものから順に紹介します。

1.メラトニン受容体作動薬

• ラメルテオン（ロゼレム）

メラトニンという自然な睡眠ホルモンに働きかけ、睡眠のリズムを改善します。
時差ぼけなどにも使われ安全性は高いですが、即効性はそれほどありません。

2.オレキシン受容体拮抗薬

• レンボレキサント（ベルソムラ）
• スボレキサント（デエビゴ）

オレキシンという目覚めに必要な物質を阻害することで、眠気が出る新しい睡眠薬です。
入眠困難、中途覚醒の両方に効果があり、依存性がほぼないお薬です。とても安全な薬ですが、人によって悪夢を見やすいという副作用があり、合う合わないがはっきりしやすい薬の印象です。

3.非ベンゾジアゼピン系薬

• エスゾピクロン（ルネスタ）
• ゾルピデム（マイスリー）

次に述べるベンゾジアゼピン系というグループに比べて依存性は低いですが、長期的な使用は習慣化してしまうため、注意が必要です。入眠困難に効果的で、即効性があります。
寝つきの悪さに対し、「取り敢えずなんとか眠れるようになりたい」という状況に合います。

4.ベンゾジアゼピン系薬

• ブロチゾラム（レンドルミン）
• フルニトラゼパム（サイレース）

これらの薬は即効性があり、短期間〜長時間作用型まで、さまざまな種類があります。症状に合わせて調節がしやすく、即効性も強いですが、長期使用により依存や耐性を形成しやすい種類となります。使用に注意が必要な薬ですが、内服してはいけないという訳ではありません。調整に専門的な知識が必要となるため、精神科、心療内科での診察が望ましいです。

不眠症と似たような疾患

不眠症と似た症状を示す疾患や状態がいくつかあります。これらとの区別が重要です。

1.うつ病

うつ状態が原因で不眠が生じることがあります。うつ病の根本的な治療が必要で、抗うつ薬を併用したり、カウンセリングが効果的な場合もあります。

2.躁うつ病

躁とうつを繰り返す病気です。躁状態では興奮が強く眠れなくなり、うつ状態でも不眠がみられます。根本的な治療が必要で、気分安定薬や抗精神病薬などを併用することがあります。

3.不安障害

理由がなく不安になったり、落ち着かず緊張したりすることで不眠がみられます。抗うつ薬や抗不安薬の併用することがあります。

4.睡眠時無呼吸症候群（SAS）

夜間の呼吸が一時的に停止することで、睡眠が断続的になります。昼間の強い眠気が特徴で、家族に指摘されたりすることで発覚することがあります。呼吸器内科などで専門的な検査が必要になります。

まとめ

• 不眠症は「寝つきが悪い」「途中で目が覚め、もう一度寝られない」ような症状を指します
• 睡眠薬は依存性がないものもあります
• うつ病など他の病気が原因のこともあります

不眠症は適切な治療を受けることで、特に回復が期待できる病気です。
他の精神疾患が隠されていることも多く、内科だけでは見逃されてしまい、漫然と薬が処方されてしまうケースがあります。
睡眠薬は「一度飲み始めたらやめられないのでは?」と不安に思うこともあると思いますが、依存性がない薬だけで1〜2ヶ月治療後に内服を終了できることも多く、漢方で徐々に改善するという選択肢もあります。奥が深い病気になりますので、一人で悩まれず、気軽にご相談ください。