2024年12月09日
統合失調症は100人に1人が発症すると言われ、精神科の中ではとてもメジャーな疾患です。
医学部のひと学年は大体100人ぐらいなんですが、私の同期でも発症した方がおり、ある日学校にこなくなったなとおもったら、後で発症していたということがありました。 これを聞くと「発症したらおしまいだ」とか怖い風にとらえてしまうかもしれませんが、そういうわけではありません。 現在分かっていることは、早期発見し、早期に治療を開始することで予後は大幅に変わるということです。
診断がおりれば、糖尿病や高血圧のように、基本的には一生の間付き合っていかなくてはいけない病気ではありますが、適切な治療を続けることで安全に生活されている方も多いので、この動画を最後まで観て頂き、知識を獲得して頂ければと思います。
主な症状
主な症状を説明します。 私は大きないわゆる閉鎖病棟での精神病院での勤務経験が長いため、受け持ち患者さんの多くが統合失調症のことがありました。その後いわゆるクリニック勤務をしてみると、ほとんど統合失調症を見ることはなく、多くはうつ病や適応障害、不眠症が多いです。そのように、一般外来ではすくないですが、病院レベルでしっかり治療しているのが統合失調症です。
統合失調症の具体的な症状をあげると「自分はいじめられているんじゃないか」というような被害妄想や、「悪口が聞こえる」というような幻聴・幻覚、考え方がまとまらなくなり、回りくどい口調になる連合弛緩という思考障害。これらは、ないはずのものが出現するという意味で、「陽性症状」と言われています。大脳辺縁系という感情や欲求をつかさどる領域でドーパミンが過剰に分泌されていることが原因だといわれています。
一方で、心を閉ざしてしまう自閉・感情鈍麻という症状があり、失ってしまうという意味において、「陰性症状」と言われています。これらは大脳皮質の前頭前野という領域のドーパミンが下がることに原因があると考えられており、脳の部位によってドーパミンの調整がうまく行っていないことでこれらの症状がでていると言われています。
他にも「自分がだれかに操られているように感じたり、びりびりとした電波攻撃をうけるように感じる」という体験があると自我障害と呼ばれます。自分の世界と外の世界は普通切り離されていますが、それがあいまいとなるイメージです。また、未治療で経過してしまうと認知機能障害を認めるため、昔は早発性痴呆と言われ、認知症の一種のように捉えられていました。
病気について
10代~20代に発症することが多く、女性では40歳ごろにも小さなピークがあります。 遺伝の要因もあるんですが、必ず遺伝するというわけではなく、遺伝的素因に加え、ストレスなどが加わると発症すると考えられています。
中学生とか若い生徒さんだと、「学校の様子がおかしい」と周囲の雰囲気の変化に気づき、心を閉ざし始めます。これを自閉と言ったり、妄想気分といいます。次第に周囲からいじめられている、と思い込むようになり、不登校になる方もいます。このケースは被害妄想になりますが、人によっては天からお告げがくるような、突拍子もない思い込みをし始めてしまうこともあります。これを妄想着想といいます。
また10代では元気がないことからうつ病のように判断されてしまうこともあり、はっきり妄想の症状が出ないうちは診断が難しいときがあります。 よくあるケースは20代で働き盛りの中、職場でのストレスから発症し、急に職場の人間が自分を虐めているように感じたり、悪口をいわれているような気がするところから始まります。
同僚の咳払いや、ちょっとした視線やなどに「いじめられているんじゃないか」という被害妄想が悪化していき、自分でも制御できない怒りや、恐怖感を覚えるため、普通に働くことも大変になります。 症状が進行していくと、町中や謎の組織が自分を狙っているように感じることもあり、よく集団ストーカーと呼ばれるような不安状態になります。
自分から妄想を確認して精神病院、クリニックを受診することはそれほど多くなく、眠れないとか、不安だということでご相談されるケースが多いです。 また、明らかな妄想の症状に心配したご家族などが促し、本人はしぶしぶ受診する、ということもあります。
治療
統合失調症の治療は、抗精神病薬による薬物療法が第一です。
抗精神病薬はドーパミンが過剰に分泌されている状態を改善するような薬を指します。 具体的にはリスペリドン、アリピプラゾール、オランザピン 、レキサルティなどの、非定型抗精神病薬と呼ばれる薬剤を使用します。非定型とは、以前しようされていた定型に比べて手の震えや筋肉の緊張などの副作用が少なく、より安全に使用できるようになったものを指します。 もちろん副作用が減ったとはいえ、アカシジアという足がむずむずする副作用や、眠気や血糖・体重増加などのリスクは見ていかなくてはいけないので、患者さんの様子をみながら調整していきます。
まず1種類目の抗精神病薬を選び、3か月の治療期間を1SETと考え、徐々に用量を増やし、効果判定します。 うまく薬が合えば、幻覚や妄想が徐々に改善し、その後考えのまとまらなさなどの思考障害も改善していきます。陰性症状の自閉などについても、選択する薬によっては改善を望めます。 薬の反応は個人差が強いので、種類や用量は経過を見ながら調整します。
これらの内容は当院のYoutubeをまとめたものになります。
ご興味がございましたら、動画でもご覧ください。
【シモキタよあけ心療内科 SNS】 –Instagram –X –HP
【院長 副島正紀】 精神科専門医 精神科指導医 精神保健指定医 認知症診療医 –X