2024年11月12日
主な症状
強迫性障害は、意味がないことだと思いつつもやめられない、という行動をくりかえす病気です。生涯有病率は1~2%と言われています。 頭から離れない考えやイメージを「強迫観念」と呼び、そこから生まれた不安をかき消す行動を「強迫行為」と呼びます。
汚いなという強迫観念がうまれ、手洗いをします。その手洗いが強迫行為と言い、トリガーとなってまた「汚いな」と思い、その強迫観念から「手洗い」という強迫行為を繰り返すイメージです。 本人も「意味がない」と思いながらも負のループを抜け出せないので、つらく感じてしまいます。
主な強迫的な有名な症状を4つ説明します。
1つ目は不潔恐怖です。 目に見えなくても「汚い」と思い、何度も手洗いし、長時間入浴したり、手袋をして食事をしないと気がすまないなどの症状です。外にいるときは汚れるのはOKでも、家の中では消毒して回ったり、服の脱ぎ方やお風呂の入り方までルールを作るようになったりします。
2つ目は確認強迫です。 「カギ閉めたっけ?」「火のもと消した?」「電気のスイッチ切ったかな?」と普通に考えれば問題なくこなしたはずなのに、どうしても上手くできてない気がして家に戻ったり、その場で確認を繰り返してしまいます。 遅刻してしまったり、不安で日中集中できなかったりなど、外出時に苦痛を感じてしまうことがあります。
3つ目は儀式的行為です。 決められたルール、しばりをもって生活するようになります。物をきまった順番で並べたり、数字にこだわったり(4を異常に避けたり、自分で決められた数字まで数えたり)、毎日同じ手順で家事をしたり、などが代表的です。 「きちんと正確に」こなせないと気が済まないため、思うように完了しないと次の行動に移れず、生活にとても時間がかかってしまいます。
4つ目は加害恐怖です。 「人を車で轢いてしまったかもしれない」「電車のホームで人を押してしまうかもしれない」など現実には起こってない、または起こす必要がないような加害行為について不安になる症状です。車を止めて、確認しにいくなどの行動もみられます。
治療
まずは抗うつ薬による薬物療法を行い、症状が軽減した後、心理療法(認知行動療法)を併用することがおすすめです。 抗うつ薬はSSRIを主に使用します。フルボキサミン、パロキセチンを使用し、少量から徐々に増量していきます。両者の有効性の差はないと言われていて、医師にとって扱いやすかったり、飲む回数などによって使い分けることが多いです。
またうつ病に比べて強迫性障害は抗うつ薬の投与量が多いことが多く、吐き気などの副作用に注意しなくてはいけません。「もう十分効果がでているな」と分かる維持量に到達するまでの期間は2~3週間おきの短い期間で通院して頂くほうがいいと思います。 また、時に抗うつ薬で問題となる副作用は性機能障害です。パロキセチンは男性であれば勃起障害、性欲の減退、射精の障害がでる可能性があります。そもそもうつ状態が重ければ性欲自体が低下している可能性が高いのですが、抗うつ薬自体によっても性機能障害が出る可能性があるので、もし不安な場合は主治医と相談するほうがいいと思います。 薬物療法によって症状が改善し不安、焦燥感、抑うつもある程度よくなった際に、心理療法などを併用していきます。
心理療法としては、認知行動療法(CBT)の暴露反応妨害法という治療を行います。不安となる状況に対し、どれだけ我慢できるか、心理士とステップを作りながら徐々に慣れていく方法です。 また厚生労働省からも強迫性障害(強迫症)の認知行動療法 マニュアルというのが発行されています。
治療予後不良の予後因子
次に悪くなりやすい背景などを説明します。
若くして発症した男性で、治療するまでに時間がかかり、症状がもともと重い方はリスクとなります。 また幼少期の強迫性障害はチック症状、めをしばしばさせたり、肩をびくっとさせたり、このような症状と関連が強いといわれています。
遺伝性や家族性なども指摘されており、薬物療法が聞きづらいということもあり、小さい子供の強迫性障害はよりしっかりとした治療が必要になります。 OCD患者の少なくとも半数は、3年以上の経過の中で部分寛解を含む寛解状態に至りますが、そのうち約半数は再発しQOLが低下してしまいます。
再発予防のためには、発症早期の治療介入や、治療開始後できるだけ早い完全寛解をめざすことが重要となります。 また抗うつ薬開始後もなかなか改善がみられない治療抵抗性の場合、アドヒアランスといって薬をきちんと飲めているかどうかを確認する必要があります。
精神疾患の合併も疑う必要があり、パーソナリティー障害、薬物依存症、統合失調症など、併発しているかもしれない病気についてもきちんと探る必要があります。
最後に
強迫性障害は、周りに気づかれず、一人苦しんでいることが多い病気です。強迫的な行動が習慣となっている場合、医療機関など第三者にうちあけることがまず初めの一歩となります。
薬を飲んだだけですぐ直る、という病気ではありませんが、症状の改善にむけて少しずつ前進できるはずですので、悩まれていたら精神科・心療内科の受診をおすすめします。
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【院長 副島正紀】 精神科専門医 精神科指導医 精神保健指定医 認知症診療医 –X