2024年11月12日
今回は発達障害の初診で医者が聞くことについてお話します。 発達障害の初診では、この発達歴、生活歴などからスタートし、現在に至るまでのエピソードを深堀りしていくことになります。 私が発達障害を疑う患者さんの診察をするときは、大きく分けて5つ挙げられます。
①健康診断
まず一つ目は、1歳半、3歳時検診で異常があったかどうかをききます。 これらは言葉の遅れをはじめ、呼びかけへの反応や、視線を追うかどうかななど、精神発達をチェックしています。 発達障害は幼少期から傾向がみられていることが多いので、もし当時指摘されていたのであれば大変参考になります。 重度の発達障害、知的障害の方であれば、該当することが多いんですが、グレーゾーンの重症度であれば特に何も指摘されないことも多いです。 幼稚園時代に、先生からご家族にちょっと行動が変わっているとか、行動で気になったことなどを伝えてくれることもあるので、健康診断含め幼少期の他人からの評価というのが大事にになります。
②感覚の拘り
次に、感覚の拘りです。 幼少期に、お気に入りのタオルなど好きなものが強い子供もいます。ただ、好きなタオルの生地の質感が異常に好きだったり、蛇口から流れる水の感触が好きで時間を忘れて水を触っていたり、味覚や嗅覚への過剰な過敏さや好みなど、あらゆる感覚における拘りがないかなど確認します。僕の患者さんの中には、公園でみんなで砂遊びをしている一方で、離れて何時間も砂の感触を楽しんでいたという方もいました。 大人になると、アニメや動画の同じシーンを何度も繰り返しみなおしたりする方もいます。 これらは自閉症にみられる症状ですが、自閉症は同じ知覚情報を受け取っても、ひとと違った受け止め方をしています。これを聞くと個性ではないかと思う方もいると思いますが、まさにその通りです。ただし、その個性によって本人が社会的にうまく適応できず苦しんでしまえば、精神科としては「障害」と評価し、治療に結び付くことになります。
③一人遊び、自分ルール
次に、「一人遊び、自分ルールがあるか」です。 感覚の次は行動をチェックします。自閉症傾向の方は一人遊びが好きな傾向にあります。印象としては、他人への興味が薄く、結果的に自分の感覚の好みに従って一人行動を繰り返しているような感じです。校庭でも一人で遊んでいたり、一般的なサッカーやバスケとか決まったものでなく、ずっと土をいじったり、木を触っていたりしている子もいました。また自閉症やアスペルガー障害の方は同じ行動・習慣を繰り返す傾向に多いんですが、たとえば毎日同じものを食べたがったり、どこかに行くときも同じルートを好んだりする傾向にあります。同じ状況、環境を毎日繰り返すことを好み、同じ洋服をずっと着続けたり、同じものを食べ続けたりする偏食がみられたりもします。このあたりは感覚の拘りも重なってきますので、併せて評価することが必要です。
④社会性
次に「社会性について」です。 発達障害の得意不得意のことを特性と呼ぶんですが、基本的になんでも卒なくこなせる、ということができません。ですので、学生だったらレポートが間に合わなかったり、友達ができなかったり、社会人なら上司に何度もおなじ内容で怒られたりしてしまいます。 自閉症・アスペルガー障害では場の空気が読めなかったり、相手と思いやりを持ちあえる関係性を作ることが苦手なため、それが社会性の障害として問題になることがあります。日本では特に和を以て貴しとなすという文化がありますので、一般社会ではうまく周囲になじむ能力が求められる傾向にあります。うまく馴染むというのは、社会人として最低限の能力をもっているかということが大事です。みんなが守れるであろう仕事の期限がまもれるか、集中力をもって仕事を行えるか、連絡にはきちんと返信しているか、朝会社にきちんと出社できるか、などこのあたりが重要です。毎日遅刻するようでは上司から「さすがに異常ではないか」と逆に心配されて、メンタルクリニックを受診してみたら?と促されることもあるようです。
⑤家族歴
次は「家族歴」です。 発達障害は家族歴があることが多いです。自閉症、ADHDともに遺伝の要素が強く、親から子供には7割ほど遺伝すると言われています。大人の発達障害では受診される方は成人した方が多いですが、親御さんについて聞くと、「診断は受けてないと思うけど、おそらくADHDっぽいです」とかおっしゃる方とても多いなと思います。もちろんすべて遺伝性ではなく、また原因遺伝子も確定しているわけではありませんが、精神科の初診では家族歴を必ず確認します。
おまけ
おまけに「屈曲点について」お話しします。 屈曲点というのは、その方の人生において、ある時期から症状がでたかどうか、の確認です。 冒頭に少しふれましたが、発達障害は大人から急に発症することはありません。 いまの特性が、幼少期から地続きのものかどうか、ずっと続いていた個性のようなものかどうかを確認します。 発達障害の鑑別診断として、統合失調症などの精神病や、うつ病などもあります。統合失調症はある時点から急に自閉的になったり、考えがまとまらなくなったりしてしまいます。 このようにある時期から始まったかどうかを確認することは、発達障害の診断においては最重要となります。
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【院長 副島正紀】 精神科専門医 精神科指導医 精神保健指定医 認知症診療医 –X