認知症の主な症状

認知症の症状は、種類によって異なりますが、共通して以下のような症状がでることがあります。

記憶障害

物忘れがあり、新しい物事も覚えにくくなります。（朝ご飯を⾷べたことを忘れる）

⾒当識障害

⽇付や場所、時間が分からない。（季節や、今が朝か夜か分からない）

判断⼒の低下

⽇常の判断や計画を⽴てる能⼒が衰える。（買い物ができない）

⾔語障害

⾔葉が出にくくなり、相⼿の⾔いたいことも理解できない（コミュニケーションができない）

性格⾏動の変化

うつっぽくなったり、イライラしやすくなるなどします。元の性格がよりはっきりしたり、⼈が変わったようになることもあります。

アルツハイマー型認知症（最も多いタイプ）

アルツハイマー型認知症は、脳が徐々に萎縮し、物忘れなどが⾒られる病気です。
「今何してたんだっけ?」と思うことは誰でもありますが、周りに教えられても記憶がすっぽり抜けて思い出せないのは病的で、アルツハイマーぽいと⾔えます。（近時記憶障害）

鍵をみても何かわからない（失認）、使い⽅が分からず、鍵をかけられない（失⾏）など⽣活がうまくできなくなります。⾔葉を理解できなかったり（失語）、わかっている⾵に取り繕ったりします。外で迷⼦になったりすることもあり（徘徊）、家族などが⼼配して受診することがあります。

薬物療法

現在根治的な治療薬はありませんが、進⾏を抑え、症状を緩和する⽬的で薬物療法を⾏います。

• コリンエステラーゼ阻害薬：ドネペジル（アリセプト）、ガランタミン（レミニール）、リバスチグミン（イクセロン）。
• NMDA受容体拮抗薬：メマンチン（メマリー）。

⾎管性認知症（2番⽬に多いタイプ）

⾎管性認知症は、脳梗塞などによる⾎流障害によって引き起こされます。徐々に進⾏するアルツハイマー病とは違い、脳梗塞など⼤きなダメージのあと、段階的に認知機能が落ちる経過(階段状変化)をたどります。歩⾏障害がみられたり、うつ症状や怒りっぽさなど感情の変化がみられたりします。

薬物療法

再発予防と認知症症状改善を⽬的とします。
再発予防には⾼⾎圧の管理、⾎液をサラサラにする治療などありますが、当院では⾏えず内科・脳外科への通院も提案させていただきます。

• コリンエステラーゼ阻害薬：ドネペジル（アリセプト）。認知症症状に対しては、ドネペジルも効果があるといわれています(⽇本では保険適応なし)。
• 抗精神病薬：チアプリド（チアプリド）。イライラ、興奮などに使⽤します。

レビー⼩体型認知症（3番⽬に多いタイプ）

主な症状

レビー⼩体型認知症は、「家の中にしらない⼈がいる」など幻視がみられたり、⼿の震えや⾜がつんのめりやすくなる、などのパーキンソン症状が特徴的です。アルツハイマー型と同様、⽇時が分からなくなったり、会話がままならない、判断⼒が下がるなどの症状も認めます。（認知機能障害）1⽇のうちで症状が変動することも特徴的です（⽇内変動）。

薬物療法

• コリンエステラーゼ阻害薬：ドネペジル（アリセプト）
• パーキンソン病治療薬：レボドパ等

根治治療は現在ありませんが、ドネペジルにより幻視などの幻覚も改善できる可能性があります。幻覚に対しては、他の精神病のように抗精神病薬を使ったらいいのでは?と思う⽅もいるかも知れませんが、ふらつきなど副作⽤が出やすいので使⽤は難しいです。

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は、前頭葉や側頭葉など特定の部位が萎縮する病気です。前頭葉が萎縮すると⾏動異常が多くなり、側頭葉が萎縮すると⾔語に影響を及ぼします。「⾏動異常型」では社会性が⽋如し、⾏動が抑えられなくなり、無銭飲⾷をしたりしてしまいます。同じ物を集め始めたり（蒐集）、決まった時間に特定の⾏動をするようになります（時刻表的⽣活）。⾔語に関する部位の萎縮がみられると、⾔葉⾃体の意味を失う「意味性認知症」、⾔葉はわかりつつもスムーズに話せない「進⾏性⾮流暢性失語」など診断されます。

薬物療法

• 抗うつ薬：セルトラリン（ジェイゾロフト）などのSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬）は⾏動障害への改善効果があります。
• 抗精神病薬：クエチアピン（セロクエル）やリスペリドン（リスパダール）は怒りっぽさや、落ち着きのなさに対し使⽤することがあります。

認知症に似たような疾患

認知症と似た症状を呈する疾患も存在します。以下のような疾患があり、正確な診断が重要です。

• うつ病：記憶⼒や集中⼒の低下が⾒られるため、認知症と誤診されることがあります。（仮性認知症）
• せん妄：意識障害があり混乱している状態です。判断⼒が低下し会話がままならないため、認知症と混同されることがあります。
• ウェルニッケ・コルサコフ症候群：アルコール依存などによりビタミンB1が⽋乏し、認知症のような⾒当識障害、記憶障害が出現することがあります。

まとめ

• 認知症は加齢だけでは説明できない物忘れがみられます
• ⾊々なタイプがあり、進⾏を防ぐ薬物療法が適応になることもあります
• 認知症に似た病気もあり、鑑別が重要です

「最近物忘れが気になる」ぐらいの症状だと、精神科外来を受診するのは⼼のハードルが⾼いかと思います。ですが、⼼理検査や問診を⾏うことにより詳しく評価できるため、現在の状況を知ることができます。完治できる可能性のある認知症（仮性認知症、せん妄など）もあり、何より早期の診断が⼤切です。まずは⼀度ご相談ください。