うつ病による傷病手当金〜申請方法と注意点を解説|シモキタよあけ心療内科|下北沢のメンタルクリニック・心療内科・精神科

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うつ病による傷病手当金〜申請方法と注意点を解説

うつ病による傷病手当金〜申請方法と注意点を解説|シモキタよあけ心療内科|下北沢のメンタルクリニック・心療内科・精神科

2025年7月14日

うつ病による傷病手当金〜申請方法と注意点を解説

うつ病で傷病手当金を受給するには?

うつ病で休職を余儀なくされたとき、まず心配になるのが経済面です。治療に専念したいけれど、収入が途絶えてしまうと生活が立ち行かなくなってしまいます。

そんなとき頼りになるのが「傷病手当金」という制度です。うつ病などの精神疾患でも、一定の条件を満たせば受給できる重要な支援制度となっています。

傷病手当金の申請書と診断書私は精神科医として多くのうつ病患者さんの治療に携わってきましたが、経済的な不安が治療の妨げになることは少なくありません。適切に傷病手当金を受給することで、治療に専念できる環境を整えることが回復への大切な一歩となります。

この記事では、うつ病による傷病手当金の申請方法や受給条件、注意点について詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。

傷病手当金とは?基本的な仕組みを理解しよう

傷病手当金とは、健康保険(社会保険)に加入している方が、病気やケガで働けなくなったときに、生活を保障するために支給される給付金です。

うつ病などの精神疾患も対象となります。ただし、業務上の理由でうつ病を発症した場合は、傷病手当金ではなく労災保険の対象となる点に注意が必要です。

傷病手当金は、健康保険に加入している会社員や公務員が利用できる制度です。一方、国民健康保険(国保)に加入している自営業者やフリーランスの方は、通常の傷病手当金制度の対象外となっています。ただし、新型コロナウイルス感染症に関しては特例で対象となる場合があります。

傷病手当金の受給条件

傷病手当金を受給するためには、以下の条件をすべて満たす必要があります。

  • 健康保険(社会保険)の被保険者であること
  • 業務外の病気やケガによる療養のために休業していること
  • 仕事ができない状態であると医師に認められていること
  • 連続する3日間を含み4日以上働けない状態であること
  • 休業期間中に給与の支払いがないこと

特にうつ病の場合、「業務外」の原因であることが重要です。職場環境や過重労働が原因でうつ病を発症した場合は、労災保険の対象となる可能性があります。

支給される金額はいくら?

傷病手当金の支給額は、休業前の給料に基づいて計算されます。具体的には以下の計算式で算出されます。

1日あたりの支給額 = 支給開始日以前12か月の各月の標準報酬月額を平均した額 ÷ 30日 × 2/3

つまり、これまでの給料のおよそ3分の2が支給されることになります。健康保険に加入していた期間が12か月未満の場合は、計算方法が若干異なります。

うつ病で傷病手当金を申請する手順

うつ病で傷病手当金を申請する際の具体的な手順を説明します。

申請の流れを理解しておくことで、スムーズに手続きを進めることができます。うつ病の症状がある中での手続きは負担に感じることもあるかもしれませんが、一つずつ確実に進めていきましょう。

必要書類の準備

傷病手当金の申請には、以下の書類が必要です。

  • 健康保険傷病手当金支給申請書
  • 医師の意見書(申請書の一部に医師が記入する欄があります)
  • 事業主の証明(申請書の一部に会社が記入する欄があります)
  • 本人確認書類(マイナンバーを記載する場合)

申請書は、加入している健康保険組合や全国健康保険協会(協会けんぽ)のウェブサイトからダウンロードできます。協会けんぽに加入している方は、全国健康保険協会のウェブサイトから申請書を入手できます。

申請の手順

傷病手当金の申請は、以下の手順で行います。

  1. 申請書を入手する
  2. 申請書の被保険者記入欄に必要事項を記入する
  3. 医療機関で医師の意見書を記入してもらう
  4. 勤務先で事業主の証明を受ける
  5. 必要書類を添えて健康保険組合または協会けんぽに提出する

うつ病の症状がある中で、これらの手続きを一人で行うのは大変かもしれません。家族や職場の担当者、医療機関のソーシャルワーカーなどに協力を求めることも検討しましょう。

申請時の注意点

傷病手当金の申請において、特に注意すべき点があります。

  • 申請期限は、傷病手当金を受けられる日の翌日から2年以内です
  • 医師の診断と意見書が必要不可欠です
  • 事業主の証明も必要です
  • 記入漏れや誤りがないよう確認しましょう

特にうつ病の場合、症状によっては書類作成や手続きが負担に感じられることがあります。必要に応じて、家族や信頼できる人に手続きを手伝ってもらうことも検討してください。

うつ病の傷病手当金受給で注意すべきポイント

うつ病による傷病手当金の受給には、いくつか特有の注意点があります。これらを理解しておくことで、スムーズな申請と適切な受給が可能になります。

特に精神疾患の場合は、身体疾患と異なる点もあるため、以下のポイントに注意しましょう。

医師の診断と意見書の重要性

うつ病による傷病手当金の申請では、医師の診断と意見書が非常に重要です。うつ病は外見からは症状がわかりにくいため、医師による適切な診断と、仕事ができない状態であることの証明が必要です。

診断書には、うつ病の症状や重症度、治療の見通しなどが記載されます。医師とは症状について詳しく相談し、正確な診断を受けることが大切です。

また、定期的な通院と治療の継続も重要です。傷病手当金の支給期間中も、医師の指示に従って治療を続けることが求められます。

支給期間と延長について

傷病手当金の支給期間は、支給開始日から最長1年6か月です。ただし、うつ病の場合、症状の改善に時間がかかることもあります。

支給期間中に一時的に復職し、その後6か月以内に同じうつ病で再び休職した場合、前回の支給期間と通算されます。これは「支給期間の通算」と呼ばれるルールです。

一方、最初の傷病手当金の支給が終了した後、1年6か月を超えて同じうつ病が再発した場合や、別の病気になった場合は、新たに傷病手当金を受給できる可能性があります。

退職後の傷病手当金

健康保険の被保険者資格を喪失(退職など)した後でも、資格喪失の前日まで継続して1年以上被保険者であった場合、資格喪失後も傷病手当金を受給できる可能性があります。

ただし、退職時にすでに働けない状態であることが条件です。退職後に症状が悪化した場合は対象外となります。

退職を検討している場合は、傷病手当金の受給資格や条件について、事前に健康保険組合や協会けんぽに確認することをお勧めします。

うつ病からの復職と傷病手当金

うつ病の治療中に症状が改善し、復職を考える段階になったとき、傷病手当金はどうなるのでしょうか。復職と傷病手当金の関係について解説します。

復職は段階的に進めることが多く、その過程で傷病手当金の支給状況も変わってきます。適切な復職計画と傷病手当金の活用で、無理なく社会復帰を目指しましょう。

オフィスでの復職シーン部分復職と傷病手当金

うつ病からの復職は、いきなり完全復職するのではなく、短時間勤務から始める「部分復職」(リハビリ出勤)を行うこともあります。部分復職中の傷病手当金については、以下のようになります。

  • 部分復職中に受け取る給与が、傷病手当金の日額より少ない場合、その差額が支給されます
  • 部分復職中に受け取る給与が、傷病手当金の日額より多い場合、傷病手当金は支給されません

部分復職は、うつ病からの回復過程で非常に重要なステップです。無理なく職場に戻るための調整期間として活用しましょう。

再発時の傷病手当金

うつ病は再発のリスクがある疾患です。復職後に症状が再発した場合の傷病手当金について理解しておきましょう。

復職後、同じうつ病が再発して再び休職することになった場合、以下のルールが適用されます。

  • 復職期間が6か月未満の場合:前回の支給期間と通算されます(最長1年6か月まで)
  • 復職期間が6か月以上の場合:新たな傷病として扱われ、再度最長1年6か月の支給が可能です

復職後も定期的な通院と自己管理を続け、再発防止に努めることが大切です。無理をせず、症状の変化に注意しましょう。

復職支援プログラムの活用

多くの企業や医療機関では、うつ病からの復職を支援するプログラムを提供しています。これらのプログラムを活用することで、スムーズな復職が可能になります。

復職支援プログラムには、以下のようなものがあります。

  • 産業医との面談
  • リワークプログラム(医療機関で行う復職準備プログラム)
  • 段階的な業務拡大計画
  • 職場の上司や同僚への理解促進

復職を考える際は、主治医や産業医、職場の人事担当者などと相談しながら、無理のない復職計画を立てることが重要です。

傷病手当金と他の制度との関係

傷病手当金は他の社会保障制度と関連しています。うつ病で休職中に活用できる他の制度や、傷病手当金との併給関係について理解しておきましょう。

複数の制度を適切に組み合わせることで、より安定した療養生活を送ることができます。

障害年金との関係

うつ病が長期化し、症状が固定した場合、障害年金の対象となる可能性があります。傷病手当金と障害年金の関係は以下のとおりです。

  • 傷病手当金と障害厚生年金を同時に受給する場合、調整が行われます
  • 障害厚生年金の額が傷病手当金より多い場合、傷病手当金は支給されません
  • 障害厚生年金の額が傷病手当金より少ない場合、その差額が傷病手当金として支給されます
  • 障害基礎年金のみを受給している場合は、傷病手当金と併給可能です

うつ病による休職が長期化する場合は、障害年金の申請も検討しましょう。障害年金は、傷病手当金の支給期間(最長1年6か月)を超えて支給される可能性があります。

高額療養費制度の活用

うつ病の治療中に医療費が高額になった場合、「高額療養費制度」を利用することができます。この制度は、1か月の医療費の自己負担額が一定額を超えた場合、超過分が払い戻される仕組みです。

傷病手当金と高額療養費制度は別の制度であり、条件を満たせば両方を利用することができます。医療費の負担を軽減するために、積極的に活用しましょう。

傷病手当金と労災保険

うつ病の原因が業務に関連している場合、労災保険の「休業(補償)等給付」の対象となる可能性があります。労災認定されたうつ病の場合、傷病手当金ではなく労災保険から給付を受けることになります。

労災保険の休業(補償)等給付は、休業4日目から平均賃金の80%(休業特別支援金20%を含む)が支給されるため、傷病手当金(給与の約2/3)よりも給付額が多くなる傾向があります。

業務関連性が疑われるうつ病の場合は、労災申請についても検討してみましょう。

まとめ:うつ病と傷病手当金の重要ポイント

うつ病による傷病手当金について、申請方法から注意点まで解説してきました。最後に重要なポイントをまとめます。

  • 傷病手当金は、健康保険(社会保険)に加入している方が、うつ病などの病気で働けなくなったときに受給できる制度です
  • 支給額は、休業前の給料のおよそ3分の2で、最長1年6か月間支給されます
  • 申請には医師の診断と意見書、事業主の証明が必要です
  • うつ病が再発した場合、復職期間が6か月未満なら前回の支給期間と通算、6か月以上なら新たな傷病として扱われます
  • 障害年金など他の制度との併用も検討し、経済的な不安を軽減しましょう

うつ病の治療には、経済的な不安なく療養できる環境が重要です。傷病手当金制度を適切に活用して、回復に専念しましょう。

また、うつ病の治療や傷病手当金の申請に関して不安や疑問がある場合は、主治医や医療機関のソーシャルワーカー、健康保険組合の窓口などに相談することをお勧めします。

うつ病からの回復には時間がかかることもありますが、適切な治療と支援を受けることで、多くの方が回復し、社会復帰を果たしています。焦らず、ご自身のペースで回復を目指しましょう。

メンタルヘルスの問題でお悩みの方は、専門医への相談をお勧めします。シモキタよあけ心療内科では、うつ病をはじめとする様々な精神疾患の診療を行っています。診断書や傷病手当金の申請サポートも行っておりますので、お気軽にご相談ください。

詳細はシモキタよあけ心療内科の公式サイトをご覧ください。

著者プロフィール 

シモキタよあけ心療内科 院長 副島正紀」

〜こころに、よあけを〜

【資格・所属学会】

  • 日本精神神経学会 精神科専門医
  • 日本精神神経学会 精神科指導医
  • 精神保健指定医
  • 認知症診療医

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